道路公社の一般有料道路も対象にすべき


高速道路の有効活用・機能強化に関する計画(案)についてもう少し書きたい。


目立たないが、この案では一般有料道路も対象となっている。しかし、高速道路会社の管理する一般有料道路だけが対象だ。地方道路公社の管理する一般有料道路が対象でないことは不公平だ。


こうした道路でも、料金の高さから一般道へ迂回し、混雑や事故を増長しているといった不合理が生じている路線も多い。例として、西九州自動車道の一部である福岡前原道路 (福岡県道路公社が管理) の実に愚かな状況を挙げよう。

西九州自動車道の側道部分は、前原東暫定出入口まで行く事は出来るが、前原市内は国道202号としては未整備区間であり、設計上線形が悪く、アップダウンが大きく、大型貨物車通行止めであり、信号機が無い一時停止交差点も多く交通事故も多い。 wikipedia国道202号

この路線の場合、隣接する福岡高速も対象外であることや、全国ネットワークを成す「自動車道」の一部であるにもかかわらず、対象外というのも引っかかる。ETCが未設置でも、可能であれば全日という形での料金引き下げも考えるべきではないか。


公社の道路にも様々な問題がありながら、機構に債務を償還する高速道路会社だけが対象になっていることは、「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」に拠っているという机上の論理があるだけで、実際の効用の面などで合理性はない。


同じように税金を支払っている国民(利用者)の目線から見ても、少しでも引き下げ対象道路を増やして公平性を増すことが求められる。


そのためには、同法律の「利便増進」の部分を、地方道路公社にも適用できるように法改正が必要だが、今国会での早急な対応を求める。

公平性に欠く都市高速の料金引下げ


高速道路の有効活用・機能強化に関する計画(案)が公表された。


平成20年度の第二次補正予算及び関連法案の成立を前提とした、「生活対策」という名の下に行われる高速道路の料金引下げ政策だ。


この案では、首都高速阪神高速も料金引下げの対象になっているが、名古屋高速などの地方自治体が管理する都市高速は、今回の割引の恩恵を受けられない。これは、公平性という観点から問題があるではないか。


まずは普通車で料金を比較してみよう。


首都高速は日曜祝日、阪神高速では土日祝日で、既存の2割引があるので、通常料金が700円の区間で560円となっているが、今回の料金引下げ500円とだいぶ割安になる。


しかし、名古屋高速では、通常料金が750円と高額な上に、ETC日曜・祝日割引が1割引でしかないので680円と高めだ。そして今回の料金引下げの対象外なのでこのままの料金だ。


 なぜ、首都高速阪神高速だけが対象なのかといえば、道路公団民営化によって創設され、高速道路の債務を一手に引き受けた高速道路保有・債務返済機構に債務を償還している道路会社であるということ。そして一連の値下げは、国が道路会社の減収分の債務を引き継いで負担する。という形を取っているからだ。


そのため、地方自治体が主体となっていて、機構とは無関係な名古屋高速などは対象外になっている。


だがここに問題がある、値下げの財源となる税金は、広く自動車ユーザー全体から徴収したものだ。それにもかかわらず機構が絡む道路だけを値下げするというのは、公平性に欠くのではないか。名古屋高速は、600円にするなど、他の都市高速も値下げの対象とすべきではないのか。


他の都市高速を対象外とする合理的な理由はどこにもない。それにもかかわらず、こうした不公平が生じるのは、首都高速阪神高速は債務償還に関する既存の法律に則っている一方で、地方道路公社では、道路の有効活用のために値下げをして、その減収分を国が負担する制度(法律)が無いからに過ぎない。是非とも必要な制度なので、これを期に創設してもらいたい。


高速道路保有・債務返済機構と各道路会社では、1月25日(日)までパブリックコメントを受け付けているので、割引の対象外になっている道路の利用者は声を上げよう、意見を送ろう。もちろん私も送ります。


国交省:報道発表資料:2009/01/16
高速道路の有効活用・機能強化について

中日本高速道路
高速道路の有効活用・機能強化に関する計画(案)について


ps.本来なら、「値下げ制度の蚊帳」を吊っている国交省に意見する必要があり、蚊帳の中にある機構と各道路会社に意見をしても仕方がないような気もするが、ともかく声を上げることが肝心だ。

後部座席のシートベルト着用がようやく義務化


道路交通法の改正で、後部座席のシートベルト着用が日本でもようやく義務化されました。
しかし、日本政府はテレビやインターネットを使ったキャンペーンをしません。
そのため、非着用がどれだけ危険なのかを見せる映像を、受動的に見る機会はほとんどありません。

一部のテレビでも使われるJAFの実験映像はこちらで見ることができます。

よりリアルな映像を見ていただくために、外国のキャンペーン映像を紹介します。


まずはフランス政府のもの


もう一つ、こちらは以前にも紹介したイギリスの交通省 (The Department for Transport )が取り組んでいる交通事故抑制キャンペーン THINK! campaigns のビデオクリップ。これもすごい。

ショッキングに作っていながら、心理的配慮がされているのが分かります。


日本政府もメディアを活用した広報活動に取り組むべきです。それこそ、道路特定財源のほんの一部でも振り向ければ予算は十分確保できます。

極端すぎる暫定税率分の議論


ガソリン税などの暫定税率の廃止を主張する民主党は、その根拠の1つとして、暫定といいながら30年もの長い間続けてきた上に、なおも10年間延長しようとしていることが問題だとしている。


確かに、暫定などという曖昧な言葉で続けてきたことや、これからさらに10年も暫定を続けようとしていることは問題だと思う。しかし、この言葉の問題は、本来ならば本則を増税すべきだったとは思うけれど、自民党政権がほぼずっと続いてきたことによる「忘れ物」ととらえれば議論の本題ではない。


本質的な問題は、本則であろうが暫定であろうが、「道路予算がどれだけ必要なのか」ということだろう。もちろんその数字の前提として「真に必要な道路整備」がどれだけあるのかについて明確にしなくてならないが、それは別の機会にしたい。


ともかく、ガソリンならたまたま28.7円であるにすぎない本則の税率なのに、その分だけで十分だという主張に全く納得させられない。


さらに、この税率は数十年前に決められたものだということも、納得させられない大きな理由だ。正確な時期を確認してみよう。


(こちらを開いてください)
http://www.motorlife.jp/tax3_2.html


このページの図でもわかるように、ガソリン税揮発油税地方道路税)、軽油引取税ともに'64年に本則税率そのものの増税が止まっている。


その後、暫定税率が加算されたのは、ガソリンは'74年、軽油は’76年だ。
両方ともそれ以降、段階的に引き上げられて現在に至っている。


つまり、'64年という40年以上も昔に決めて、30年以上前に「それでは足りない」として引き上げるまでの税率を基準にして、それ以上の部分である暫定分の廃止を主張しているわけだ。


そんな昔の税率を基準にして、現在の道路整備に必要な財源を議論することが、果たして適切なのだろうか。


つまるところ、民主党は、単に本則税率が妥当との主張をするのみで、必要な道路整備計画はどれだけあるのか、という点は十分に思慮ぜず(民主党は十分といっているが大いに疑問)、まずは予算ありきで、ともかくその枠の中で道路整備を行おうとしている。これは、「必要な」の議論にはあまりにも無関心なのではないかと言わざるを得ない。


それに対して自民党などは、信頼されない「必要な」を根拠とする道路整備費を積み上げて、予算を確保しなくてはならないとする主張の一点張りだ。


民主党の主張にしても、両党の主張の差にしても、なぜこれほど両極端なのか。
信頼される「必要な」を根拠とする整備費用がいくらなのか、全く見えてこない。
日本の財政状況を考えれば、ある程度予算の縮小を重視した中庸な政策もやむを得ない。
とにかく、もっと質の高い納得の行く議論をお願いしたい。


さもなくば、両者の主張の理の部分を取り持ちつつ、超発展的な道路政策である道路構造改革を取り入れてもらいたい。



そのほか参考ページ

http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/200509/04_t1.html
http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/200509/09.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%93%E8%B7%AF%E7%89%B9%E5%AE%9A%E8%B2%A1%E6%BA%90
国交省 Q : 道路特定財源とはどのようなものですか?
http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-funds/sp-funds/sp-funds00.html

ワトキンスが見たら嘆くであろう日本の道路のバカバカしさ

日本が道路整備で行っていることを、交通の発展という観点で他の交通機関に例えてみよう。
 

まずは鉄道。

大量で早い移動手段の需要があり、当然新幹線を建設すべき路線に、在来線規格の鉄道を建設すれば、線形はよくなって多少は速度が向上するけれど160km/h程度の営業運転が限界だ。これでは、交通が発展しているとは言い難い。

次に航空。

米国の航空会社がジェット機でニューヨーク〜成田の直行便を運行している時代に、日本の航空会社は、巡航速度が遅く航続距離が短いために直行できず、アンカレジで燃料補給する必要があり、信頼性も劣る前時代的なプロペラ機を導入して、燃料代も時間も余計に必要な便を設定する。などということをするはずがない。


信じられないかもしれないが、こういったバカバカしいことと同じことを、日本は道路整備で実際に続けているのだ。


幹線道路で発展というのは、対面交通の2車線道路から、一段と規制速度や平均速度が高いくて事故も少ない高規格道路網を築くことになるが、それは特別な路線以外にはつくられない。高規格でないとしても平均速度が80km/h程度は出る規格の道路を整備すべき路線に、40km/hも出ない事故発生率が高い信号交差点のある道路を建設している。これがまさに上記の例に当てはまる。


その上、本当の幹線だけとはいえ、せっかく建設した通称「高速道路」も、料金が高くて十分に使われていない。これを再び航空に例えてみよう。

ニューヨーク〜成田間の航路を独占している航空会社が、ジェット機とプロペラ機の両方を就航させている。
そして、ジェット機はジェット料金がとても高いため、急ぐ必要がある場合やお金に余裕がある場合に利用するのが一般的となっており、普通はプロペラ機に乗るのがあたりまえと思っている。そのため、ジェット便は多客期を除けば空いており、収益性も悪い。そのため減便すべきという議論が出ている。

そればかりか、改良プロペラ機(高速道路に平行する国道のバイパスですよ)の導入に投資している(しようとしている)。

こんな馬鹿なことはあり得ないが。日本の道路ではこれが現実なのだ。



◆さらにたちの悪い道路。性能の低いジェット便(高架道路をつくるのに設計速度60km?)を就航させることを前提に、プロペラ機を先行して投入し、ジェット便が投入されてもプロペラ便は存続せざるをえない。

ワトキンス調査団の視点を再び。


木走日記 :すべては「ワトキンス・レポート」から始まった
にて、道路特定財源暫定税率にかけて「ワトキンス・レポート」について取り上げられていることに触発されて。研究を始めた頃に考えていたことをアップしたくなった。


「ワトキンス・レポート」は戦後復興期の日本の道路状況を「日本の道路は信じがたい程に悪い。 工業国にして、これ程完全にその道路網を無視してきた国は、日本の他にない。」と批判したわけだが、もし彼らが現在の日本に来ても、同じように酷評されることは間違いない。

「日本の道路は信じがたい程に悪い。 工業国にして、これ程多額の投資をしながら使い物ににならない道路網を整備をした国は日本の他にはない、歴史上最初で最後となるだろう。」


自動車道があっても料金が高くて十分に使われていない。かなりの田舎か特別な路線を除けば、当時の悪路の代わりに信号交差点の連続で遅い幹線道路。荷車はなくなったものの、多くの大型トラックが人や自転車と混在して街路を通行している事は変わらない。

・・・この50年間、日本は一体何をしてきたのだろうか。


非常に情けないことに、日本は今こそ改めてワトキンスレポートのメッセージを深くかみしめ、先進諸国と日本の道路状況の違いを把握し、大いなる反省をしなくてはならない。

4年しか使われなかった道路標識(これも道路予算の無駄)


道路特定財源問題で、本質的な道路の議論とは別な無駄が話題になりました。そちらの追及も欠かせないですが、ここではやはり道路整備そのものに見られ、しかも日本特有と思われる無駄を取り上げてみます。


先日、国道23号の豊明〜大高間(下り)で、案内標識のリフレッシュが行われました。

標識BOX(道路標識に関する意見箱)等を通じて、道路利用者から、「目的のIC入口(出口)がわかりづらい」との声を多くいただいていました。(名古屋国道事務所)http://www.cbr.mlit.go.jp/meikoku/kisha/pdf/20080206_kisya.pdf


実はこの標識、4年前に設置したばかりなのです。
(施工したキクテックさんのページで確認できます)
標識柱はそのまま使うようですが、標識版を取り替える費用は本来なら必要のないため、無駄だといえます。リフレッシュなどといっていますが、言葉が間違ってると思います。


おそらくですが、こんな無駄なことしているのは日本だけです。


なぜそう言えるかというと、諸外国では案内標識の設置基準が、複雑な道路網にも対応するように定められていて、運用もきちんとされています。そのため、わかりにくいということはまずありません。
もしかすると多少の修正はあるかもしれませんが、
これほど大規模に付け替えなければならない事態はまず起こりえないのです。

それに比べて日本では、案内標識の設置基準が満足できるものではないため、単純なうちはどうにかなっても、複雑になると対応できなくなり、その場その場の例外的な表示や法定外標識で対応しています。この問題は、日本中の案内標識を見みれば明らかです。


標識そのものは交通の教則にも載っていますが、設置基準は「道路標識ハンドブック」に示されているようです。
社団法人 全国道路標識・標示業協会 発行25000円也

残念ながらまだ見たことがありません。
是非見たいですが、見たら憤慨するかも。

とにかく、道路案内標識システムの抜本的な改革を提言します。


さて、中身の議論に入りたいと思います。
論点はさまざまありますが、ここではリフレッシュポイント3についてだけ述べます。


おやおや、また法定外標識を増やしてしまいましたね。
(白地にして如何にも法定外らしさを演出?)

この標識自体はわかりやすいのでよいのですが、法定外標識をどんどん増やして基本の標識を補完する形はよくありません。外国ではこのような形式は法定標識になっています。つまり、これが法定標識となっていれば、始めからこれが設置されていて付け替える必要はなかったわけです。


フランスの例


<参考>
フランスの方向標識一覧のページ

国交省道路局>案内標識一覧