「道路交通法改正試案」に対する意見を送りました。

今までにも書いていることを上手いことまとめられました。その他まだ書いていないこともあります。

標識の項目は、ラウンドアバウトの計画・設計ガイド(案) リンク
(Draft) Guide for Roundabout Planning and Design
(社)交通工学研究会を参考にしてください。


以下、提出した意見です。

環状交差点(仮称)の交通方法に関する規定の整備に関して、優先権に係る法令と標識の全体的な見直しの必要性などについて意見を提出します。

ア 「譲れ」の導入について

そもそもわが国では、環状交差点(仮称)を整備するにあたって欠くことのできない「譲れ」(左右から来る交通に道を譲れ。指示された場所で一時停止する義務はない。ただし、道を譲るために必要ならば一時停止しなければならない。)の優先権標識ならびにそれに関する法の規定が未制定となっているため、早急に対応する必要があります。

飯田市などでのラウンドアバウト型交差点では、一時停止を必要としない道路構造としておきながら一時停止規制が敷かれているという不整合があるため、ほとんどの運転者が一時停止を守らず、むしろ「譲れ」規制の本来のラウンドアバウトに近い運転行動をとっています。

道路交通法改正試案には、「環状部分を通行している車両が交差点に進入しようとする車両より優先することとするなど」とありますが、ここで言及されているのは優先関係だけであり、一時停止義務をどうするかについての言及がありません。当然あるべき形として「譲れ」の導入を考えてのことであれば問題ありませんが、万が一にも。一時停止義務を残す。「徐行」などの既存の標識で対応しようとする。などの拙劣な対応がなされないよう強く求めます。


イ 自らに求められている行為を明確化し、事故防止を図るためにも「譲れ」を

わが国の運転者は、概して優先権の意識が希薄であり、第二条二十二項で定義される進行妨害が多々発生しているのが現状です。その要因の一つとして考えられるのが「譲れ」がないことです。

道路交通法の第三十六条、第三十七条、第四十三条などには、諸外国でいう「譲れ」と実質的に同じ意味である「進行妨害をしてはならない」とありますが、これを意味する標識が定められていません。

これは、道路交通の事故防止と円滑性にとって根本的かつ重要な、優先権についての規則が目に見える形で存在していないということを意味しています。そのため、諸外国では例え「STOP」でも、それは譲るために止まるのだ。というように認識として密接に繋がっているのに対して、わが国では「止まれ」は認識として単独で存在しているのです。



ウ 言葉と脳の関係を鑑みた、道路交通法の文面の改正について

禁止されていることをしない(してはいけないことをしない)ということは非常に捉えにくいものです。義務(〜せよ)具体的には、道路交通法の改正案文として「…進行妨害をすることのないよう譲らなくてはならない。」などとすることにより、自らの主体的な行為として譲らなくてはならない、ということが明確に認識され、脳ではシンプルに「譲れ」となり、行動に違いが現れます。

シンプルな「譲れ」にすることは(イ)で単独で認識されていると書いた「止まれ」と「ゆずれ」が繋がって、「譲るために止まる」と一つになることが容易となります。そのため、環状交差点だけでなく他の場所においても進行妨害は減ると考えられます。これは、運転者教育の場面でも教育上の効果を発揮します。

エ 道路交通法に「優先権」という文言を用いることについて

道路交通法では、優先関係にかかわる部分のほとんどが「義務」についてであり、その対極としてあるべき権利である「優先権」については直接触れられていません。

これでは、「自らが義務を遂行することで、自らも権利を行使できる交通秩序をつくる。」という交通参加者、特に運転者の当事者意識は芽生えにくいです。

道路交通法の理念でもあり、環状交差点での、安全かつ円滑な道路交通のためには、優先権が有るのか無いのか、このシンプルさが必須です。「譲れ」の導入を機に「優先権」という文言を使い道路交通法を刷新することが求められます。

オ 環道の外側線上の進入路との境界線について

「譲れ」制御となる環状交差点(仮称)では、譲る義務を果たすために、従来の停止線に相当する重要な路面標示となることから、これについても規定する必要があります。

現在、交差点等において優先関係が低位の道路から高位の道路への進入する部分の車道外側線上などに使われている法定外表示のドットラインがあり、既設の環状交差点でも暫定的にこれが使われています。

これらは共に、事実上「譲れ」としての意味も表していますが、あくまでも法定外の表示であるため、現在の位置づけのままでは問題があります。

環状交差点などに用いるための「譲れ」の意味を明確に持たせ、標識と共に用いられる法定標識として、既存のドットラインと区別されたより太く、短い破線。もしくはベルギーなどで使用されているシャークトゥース(鮫の歯)などの新たな境界線を定める必要があります。

カ 「徐行」標識の廃止について

赤枠の逆三角形の「徐行」標識は、同様の「譲れ」標識を導入するにあたり、誤認の恐れが生じるため、また、意味の違いを十分に周知するために廃止する必要があります。

そもそも徐行標識は道路工事に係る臨時的な掲示がほとんどであり、必ずしも徐行が必要でない場所にも掲示されることで全く持って無視される存在となっています。また、公道に建植され常設されているものも少ないながらありますが、いずれも、真に低速での走行が求められる箇所には、時速10キロメートルや20キロメートルといった具体的な速度規制を敷くべきであり、徐行標識の存在意義は認められません。

ラウンドアバウト型交差点での使用も考えられていますが、環道の交通や歩行者等に影響を与えないことが確認できれば徐行することなく環道に進入することができるのがラウンドアバウトであるため、ここでの使用も誤りです。 

キ 流出部の案内標識について (関連)

環道からの流出部では、流出道路の方面、方向などを案内する必要がありますが、交通事故抑止のために環道を周回中により素早く的確に認識できるよう、国交省等と連携して新たな様式の案内標識を設ける必要があります。

既存の、都道府県道番号(118の2-B) では、流出道路が市町村道であり路線番号が無い場合もあるほか、方面,方向及び距離(105-C)では矢印と道路番号の複合などで認識しづらいことから、欧州で一般的な矢羽根型の案内標識が望ましく、自動車道の案内標識、公共施設案内なども同列に掲示する基準を設けるべきです。


ク 広報活動について (関連)

環状交差点の意義、通行方法の周知徹底、譲れなどの広報活動については、米国・ドイツなど、ラウンドアバウト後発国で行われている広報活動を十分に研究し、国交省地方自治体と協力して十分行う必要があります。