道路特定財源の一般財源化について  第5回 自動車道 あたりまえに 利用するのが 世界の常識


道路構造改革では、抜本的な料金改革を行うことを提案していますが、近年では国交省も利用促進のための料金割引実験をするなど、問題解決にむけた取り組みをしているので、それとの違いが見えにくいかもしれません。


ここで、「世界の常識」からその違いを明らかにしてみましょう。


本来、自動車道や自動車専用道路というのは、自動車時代に建設した自動車のための道路でしかありません。そのため、先進諸外国では、移動する経路にあるならばあたり前に通行する道路となっています。急ぐ人が、高速道路で高速料金を払って、ではないのです。あたりまえにです!


ですから“利用促進”などと言っている国は日本をおいて他にはないでしょう。外国でも、諸条件から局所的にはそういう議論はありますが、日本では逆に局所的に利用促進の必要がない道路があるだけで、全国的には利用促進が必要なのです。


つまり、国交省と道路構造改革による料金値下げとの違いは、一般道で問題が起きているので、もっと利用されるようにしよう。というものであるのに対して、あたりまえに利用されないことがそもそも間違っていて、それが国交省がいう問題以上の問題を起こしているのだから、あたりまえに通行できるようにする必要がある。というのが道路構造改革で求める料金値下げなのです。


この立場からの議論が始まらない限り、日本の道路は根本的に変わらないでしょう。


まずは、貨物車だけでもあたりまえに通行させよう。


大型貨物車の通行料金が、普通車より割高に設定される、というのは全世界的に一般的なことですが、日本では、多くの路線で普通車でさえ高額なのに、諸外国に倣って同じように割り増して料金を決めているため、大型貨物車の通行料金はさらに高額になっています。

日本と諸外国における有料道路料金比較 (PDF)20ページ
日本の普通車料金よりドイツのトラック料金の方が安いです。
(ドイツというとアウトバーンが無料開放されていることで有名ですが、現在は大型車だけが有料化されています。EU拡大に伴って東ヨーロッパからの貨物車が増え維持費がかさむのにタダで使われてはかなわない、などの理由によります。)


軽油が税率が低く抑えられているために安い(安かった?いえいえまだ安いです)こともあって、燃費の伸びる道路を選択しないということと、重い料金負担を避けるということが相まって、せっかくの高規格道路を利用しないトラックが一般道を走ることは、道路交通環境や道路整備のありかた(バイパス整備など)に重大な悪影響を与えています。

話を聞いた運転手の中で、高速代が会社から全額出ると答えたのは、約5割。高速の上で話を聞いたことを考えると実際にはもっと厳しいのが実情かも知れない。

…高速代が全額出ないという会社は、高速を使った分だけ給料から引くという方式と、最初から一部区間だけ出してもらえるという2つの方式だった。混雑しやすい場所や時間帯に高速を使ったり、休憩を取ったりしながら、なるべく下道を使う努力をしている。睡眠を削って下道を使っている形だ。


日本が広くなる?〜高速を降りて下を走る運転手
インターネット新聞『JanJan2006/11/13


本来、自動車道がある幹線経路の一般道に、大型トラックが列を成すようなことはあってはならないのです。ましてや、こんな馬鹿げたことを運送業者や運転手に強いている日本の道路行政は、やはりどうかしています。


こういった問題を解消することを考えると、日本では、諸外国と同じように割り増してはならないのだ、ということになります。つまり、先進諸国と同じ事をしてはならないほど異常なのだということです。多くの人がこれに気付く必要があるでしょう。


とにかく、まずは大型貨物車だけでも、あたりまえに利用できるように、抜本的な料金改革が必要です。第3回でも紹介した、全日本トラック協会の通行料金の引き下げの陳情(深夜割引を80%にまで思い切って拡充することなど ※内容は要検討ですが)は絵空事ではなく、絶対に実現すべきことなのです。


話はそれますが、


道路特定財源一般財源化する、などというそもそもの戯言に対して、
「…高速道路の通行料引き下げに使うのは税の無駄遣いでしかない。」
などと社説(12月8日)に書く朝日新聞のひどさを見ると、自分は特別にアンチ朝日新聞とかではありませんが、なるほどこういうどうしようもない記事を書く新聞(朝日に限らず)をどうこう言うのもわかるな、と思います。

それに対して、言論NPOでの横山禎徳氏の主張(記事)を見ると、「本質を問う」議論を展開しているというだけあって、さすがだな、と思いました。

…ぶっ壊すためには、いろいろ理屈でないこともやらなきゃいけなかったし、それでやれた部分もあります。しかしながら、例えば道路の特定財源の議論においても、本当に日本は道路が十分あるのかないのかという議論はされていないわけです。

別に私は道路族ではありませんが、まじめで責任感ある官僚の人たちと話をすると、ドイツと日本を比べたら、日本は高速道路が本当に足らないといまだ言っています。要するに、議論が尽くされていない部分はかなりあるわけです。…


社説の詳細は、道路特定財源に関して書いている木走日記さんのエントリーをリンクさせてもらいます。そちらでどうぞ。