道路特定財源の一般財源化について 第4回 国費投入はそれなりの理由があり必然だ

瓢箪から出た駒がだんだん大きくなっているようです。
(この駒とは、道路特定財源一般財源化によって、これまで税財源が充てられていない料金値下げや債務返済に、道路財源が思いもよらず充てられるようになることです。)

高速道債務に国費投入、国交省など合意・改革に逆行

 国土交通、財務両省が2008年度予算から、民営化した旧日本道路公団などの約40兆円の債務の一部を国費で肩代わりすることで合意したことが明らかになった。道路特定財源を使って高速道路会社の負担を軽減し、通行料の引き下げにつなげるという名目だ。利用者にメリットがあるように見えるが、国費投入は「国民負担なしに債務を返済する」との民営化の趣旨に反し、財政負担の増大につながる。構造改革に逆行する動きで、安倍晋三首相の判断が問われる。

 05年秋に民営化した旧道路4公団の債務は約40兆円。民営化後は独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が道路資産と債務を引き継いだ。民営化で誕生した東日本高速道路会社など6社は料金収入を元手に同機構に高速道の賃貸料を払い、機構はこれを債務返済に充てている。50年までにすべての債務を返済する方針だ。 (07:00) nikkei

この記事の続きはこちらで読めます。http://klovess-my.jugem.jp/?eid=1159


年末に社会実験の予算に関する記事(下記)があり、今回の日経の記事の話との関係がはっきりしませんが、とりあえず話を進めましょう。

国交省2007年度予算内示/国際物流インフラの整備に手厚く(LNEWS 2006年12月22日)

地域の活性化、都市再生分野では「弾力的な高速道路料金設定に関する社会実験」に360億円(3.13倍)を盛り込み、「道路特定財源の見直しに関する具体策」(12月8日閣議決定)に沿って、2008年度以降、高速道路料金引き下げによる既存高速ネットワークの効率的活用、機能強化を図るために、料金引き下げに伴う効果を把握する社会実験を行う――とした。

3.13倍になったとはいえ、高規格道路の交通分担率を適正にするには全然少ない!
少なすぎる!最低でも10倍にはする必要があります。


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国費投入が「国民負担なしに債務を返済する」との民営化の趣旨に反するという批判はやはりどうしてもついて回るようです。税金の投入先が借金の返済となると、批判はなおさら強くなるようですが、よく考えてみてください。

本来は、ある程度まで税金を投入して建設すべき高速自動車国道を、ほとんど利息の付く借金だけで建設する、という間違ったやり方でやってきてしまったために、料金が高くなっただけでなく、膨大な借金が積み重なってしまったのです。今その借金の返済を助け、料金を下げるために税財源を投入するという行為は、過去に投入しておくべきだった税財源を、今ようやく投入しようとしているにすぎません。ただ、高い利息が付くツケをしたことで、余計に支払わなくてはならなくなったという大きな失敗は取り返しがつきません。

「料金の引き下げは、民営化会社の経営努力で実現するのが本来の筋だ。」という意見がありますが、それだけではままならない状態にあることを認識する必要があります。


( 借金が膨大になり料金が高騰した原因として、猪瀬氏が再三指摘したファミリー企業の実態など高コスト体質の問題も無視はできませんが、根本的な原因の1つは、間違った方法で財源を調達し整備してきたことです。)


先般コメント頂いたmasa 様、猪瀬氏について少しお伝えします。上に書いたように「公共事業に絡む闇の部分について詳しい方」であり、道路交通かくあるべしという哲学から改革を見ているわけではない、というのが私の1つの見方です、少し伝わりますでしょうか。


話を戻しましょう。国費投入を必要とするこのような背景がありながら、メディアやブロガーから絶えない批判を収めるためには、第3回で提案した「部分的な陰の通行料金」を採用することを勧めます。


繰り返しになりますが、この制度の特徴です

・道路会社の負担軽減ではなく、直接的に有料道路の利用者の負担を軽減するのです。

国土交通、財務両省の案:各高速道路会社が債務返済機構に支払う高速道の賃貸料を軽減。軽減分だけ、高速道料金を引き下げる。国は引き換えに機構の債務の一部を引き受け、道路特定財源で肩代わりする。

…民営化に伴う閣議決定で、政府は旧日本道路公団の債務返済に国費を投入しないとしており、債務の肩代わりは事実上、閣議決定に反する。

確かに反しますね。だから以下に続きます↓ 

政府・与党は昨年末、道路特定財源の見直しに向け、08年の通常国会に関連法案を提出する方針を明記した。国費による高速道債務の肩代わりには新たな法的根拠が必要で、政府はこの関連法案に新規定を盛り込みたい考えだという。(以上日経より)


「部分的な陰の通行料金」であれば、とりあえずその必要はないのかもしれません。
債務の肩代わりではなくて、利用者に変わって料金の一部を支払うものですし、すでに社会実験という形で行われているからです。
しかし、おそらくその根拠となる下記の法律に照らせば、自動車道の真の交通需要を見極めるための社会実験の期間が終わったら、きちんと法改正が必要です。

高速道路株式会社法 
(調査への協力)
第七条  会社は、国又は地方公共団体が、会社が管理する高速道路において、道路交通の円滑化を図るための施策の策定に必要な交通量に関する調査その他の調査を実施するときは、これに協力しなければならない。


・民営化会社に支払われる国費は実際に利用された分に応じているので、利用促進のための経営努力が求められるため、慢心を招くようなことにはつながりません。

カチンとした協定組んで「さあこれから」という時に、気まぐれで政府が金をよこして来るというのは、気分のいいものではあるまい。というか、そういう気分というか気概でやってほしいと思う。

やまがたあんな道、こんな街

これに同意します。しかし、それはそれとして、最も重要なのは道路交通を最適化することです。こだわっていてはいけません。


そもそも、「国民負担なしに債務を返済する」と言いますが、この文句はまやかしですから騙されない(聞き流さない)で下さい。必ず誰かが払うお金が返済に充てられるのですから!
この場合、直接支払うのはもちろん利用者です。

さらに、返済に国費を充てることは「国民負担の増大」だと書かれますが、とんでもない。

むしろ現状が、利用者からだけ高すぎる料金を徴収することや、自動車道などが当たり前に利用できないことで、社会全体が無駄な時間やお金を負担させられているのです。

この制度に限りませんが、値下げは、まわりまわって国民全体の全体の負担軽減になるのです。混雑が減少する一般道の利用者はもちろん、幹線道路を避けて歩道もない危険な裏道を通るというバカなことは減ります。

逆に、経済効果は計りしれません。(ここでは詳しく書きませんが、地方の観光産業の振興etc)

国民負担なしはあり得ませんが、料金値下げによって相対的に国民負担を減らすことは可能なのです。