歩道のない街路でまた惨事が


25日に、園児らの列に自動車が突っ込むという痛ましい事故が起こりました。
脇見運転をしたと供述している運転者の過失責任が大きいことは言うまでもありません。しかし、この事故が発生した要因は他にもあります。今回はそれを考えてみます。


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毎日新聞 2006年9月25日 (ヘリからの事故現場の空撮映像あり)
[http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060925i412.htm:title=読売新聞 2006年9月25日22時8分] 
JAN JAN ○○の列にクルマが突っ込む 今度は保育園児 2006/09/25

現場の地図と航空写真 googleマップ


この事故から日本の道路行政が反省し、学ぶべき、細街路の道路構造


交通戦争と叫ばれ、道路に歩道を付けることにようやく目覚めた時代から、一定規模の街路には歩道が設置されるようになりました。ところが、細街路には歩道設置が義務づけられることはなく、そのまま今日に至っています。


そして、その後の土地開発によって拡げられた、とてつもない面積の市街地の細街路は、歩道のないことがあたりまえになってしまいました。


「住宅街の家の門を出たら、歩道がない狭い路地」という風景は、日本では一般的ですが、先進国では稀なことです。今回の事故の要因の1つには、そんな日本の道路構造があります。

今回のような惨事を減らすためにすべき事。


すでにつくられた市街地では、一方通行化による歩行者用スペースの確保などが考えられます。国交省道路局などが「くらしのみちゾーン」「あんしん歩行エリア」を進めていますが、もっと積極的に取り組むべきです。




しかし、日本の対策の現状は、上の写真のように、申し訳程度に歩行者用空間が確保されている程度のものです。




この写真は、パリ近郊の少し古い住宅街です。どこもこんな感じであたりまえに歩道があります。フランスで日本の住宅街のように狭い路地があるのは、300年以上昔に建築されたとおもわれる古い家屋がある地区くらいです。(それでも田舎町でなければ大抵は歩道がある)


そして、交通安全化対策を施す場合には、この写真(ページ右下の写真をクリック)のように、すでに歩道のある路地に、駐車区画を兼ねた速度抑制のための障害物を設けているのです。


日本でも、可能な限り、車道面との段差や縁石で仕切られた歩道や、柵や金属製のポールなどで仕切ることが求められますが、これまでの構造では、十分な道幅がないため、それが難しいのです。


ですから、これからつくられる街路には、細街路に至るまで歩道の設置を義務づけることが必要です(数件の住宅のための行き止まりとなっている枝道や、自動車が進入禁止の道や、HOME ZONE 指定する場合を除く)。これは、道路構造改革の一環として取り組むべき重要な項目の1つです。


引率者の危険に対する意識


 近くの主婦(61)によると、現場付近は園児たちの散歩コース。表通りが渋滞した時の抜け道で、スピードをあげて走り抜ける車もあるという。([http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060925i104.htm:title=2006年9月25日13時52分 読売新聞])


 地図を見ると、事故が発生した歩道のない路地に平行する「けやき通り」には、広い歩道があります。引率者である保育士さんたちも、これまでに幾度かは危険を感じたことがあったものとおもわれます。もしそうなら、できるだけ歩道のあるけやき通りを通るべきでした。もし、危険な状態に遭遇しておきながら危険と感じていなかったのだとしたら、それはそれで問題です。


また、この場所でこの時に、右側を歩いていれば、事故は起こらなかった。ということも見逃してはなりません。


道交法では、歩道や十分な広さの路側帯がない道路では、歩行者は右側を通行することになっています。


この規則は決して無意味なものではありません。自動車やオートバイが右に逸れて歩行者などに衝突するには、左に逸れて衝突する場合よりもより逸れる必要があるため、確率的に衝突の可能性は低いはずです。また、自分に向かってくる自動車などを見ることができるため、いざというときに避けられる可能性があるからです。(今回のように集団でいるとどうにもなりませんが)


付近の幹線道路との関係も見逃せない。


今回の事故には直接関係ないようですが、この路地は普段から表通り(けやき通り)が渋滞した時の抜け道となっていて危険だったという証言から、そもそもこの路地はいつ事故が起こっても不思議ではない状態にあったということができます。


地図などを見る限り、この道路が渋滞するのは何かが間違っていると感じます。それを引き起こしている要因として、付近の幹線道路との関係も見逃せません。


まっとうな道路では、「時間優先のコース」と「距離優先のコース」は別となり、ローカル道路を通行する必然性がない交通は、「距離が伸びても、時間優先となる幹線道路経由のコース」を通るものです。


しかし、付近の主要幹線道路をみてみると−

  • 東北自動車道や外環専用部が高い有料制である。
  • 4号草加バイパス、国道122号や国道298号(外環一般部)は規制速度の低さや信号交差点があり遅いため、十分に「道路」でない。


これらによって、川口市を縦断する交通にとって、「距離優先のコース」が「時間優先のコース」と同じになっていて、けやき通りを通行している通過交通があり、それが影響して渋滞を起こしているのではないでしょうか。

心理カウンセラーは派遣されたのか。


悲惨な事態に遭遇した園児と保育士らの心のケアのために、カウンセラーが派遣されたのか気になります。事故が起こった日に、寝る前にする必要があります。

ちなみに


今回の事故報道では最近の飲酒運転事故の多発を受けて、各紙が飲酒運転でははないと報道しています。ようやくと言った感がありますが、熱が冷めて報道しなくならないよう願います。([http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060925i412.htm:title=読売新聞]も([http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060925-00000004-yom-soci:title=yahooニュース]))