全線開通まで50年を要した環八通り


環八を通る書いておきながらそのレポートを出さないのはまずいな、と思っていたら、ちょうどリクエストを頂きましたので、遅ればせながら書きたいと思います。リクエスト下さった方、メッセージありがとうございました。


本線が地下にある区間の地平部の交差点はロンポワンにすべき。など、構造や標識について指摘すべき点は多々ありますが、ここでは大きなことだけに絞ります。


もっとも気になったことは、今回開通した区間練馬春日町トンネルなど近年開通した区間も含めて)と既成の区間の道路構造にあまりにも差がある。ということです。


近年開通した区間は、半地下構造やトンネル、高架橋が主体で建設費がとてもかかっています。

それに対して既成の区間は、井荻トンネル以南は言うに及ばず、今回の開通によって途切れ途切れではなくなった井荻トンネルから東の区間も、既成部分は、日本では一般的な、どうしようもない平面街路型幹線道路が続きます。

但し練馬区八幡神社のあたり(livedoor 地図) だけは、平面街路ながらも、沿道にゆとりがあり、防音壁も設置されていて、ただの平面街路ではあまり見かけない感じです。(東京の外環や名古屋の環2の一般部は自動車専用部がセットなので別物です)




道路の開通効果と費用対便益比について少し考察します。

開通による時間短縮には、最適ルートができることの他に、旅行速度も関係しています。

環八北側区間を通しての旅行速度を考えます。トンネルなどでしばらく信号が無くても、基本的に信号交差点のある道路なので、そのうち止められます。もし主要交差点以外が平面街路で建設されていても、信号機は系統制御されると考えられることから、どちらの構造でも旅行速度はそれほど違わないでしょう。

それなのに、今回の部分は幹線道路との交差以外も立体化されていて、約4.4キロメートルに約1,400億円の事業費がかかりました。これだけ費用を掛けた道路ですが、その割に便益は低いです。

もしも、北側の区間だけでも、信号交差点のない道路だったら、旅行速度は倍ほどになり、費用対便益比は格段に高くなります。しかし、実際には信号交差点が散在しているために旅行速度はとても「道路」とは言えないほど低く、それに応じて費用対便益比も低くなっています。

日本の道路全体でよくみられることですが、一般道は平面交差というバカな概念に基づいて建設しているために、安く造った部分(平面信号交差点)のせいで、高い建設費を掛けた部分が十分に活かされず、まっとうな道路整備をした場合に比べて費用対便益比がより低くなるという、とてももったいないことが起こっているのです。


◆例:  A 経路を短縮するトンネルの出口に信号交差点 
      B 近くに信号交差点があって混雑している橋の4車線化


◆解決例:A 旧道など側との交差点は、ロンポワンか無信号交差点
      B 橋を4車線化する費用を信号交差点の立体化に

建設費が高い構造は、もはやいたしかたない。

環八は、おそらく全面的に平面(主要交差点の立体交差は別として)で計画されていて、後に都市計画の変更(設計変更)があったものと思われます。

この変更は、旅行速度の面では、前述の通りそれほど違いをもたらさないでしょう。しかし、沿線住民に与える環境負荷(大気汚染、騒音など)や交通事故の増加、地域分断などへの影響は、半地下トンネルなどにしたことで、最小限に抑えられています。

このように、かつては平面交差道路として計画された路線を、社会的要請を受けて設計変更することは、他の道路計画でもますます求められています。建設費が増大するとしてもできる限りのことはする必要があるでしょう。

後からアンダーパスを建設して、信号のない区間と平面交差がまだらになる例は多々ありますが、1つの路線の中で開通時からこれほどこまぎれに規格が違う区間を持つ路線はあまり例が無いと思います。全線開通までにそれだけの時代が流れたということでしょう。

沿線住民にとって、近年ようやく開通した部分がトンネルなどの構造になっていることは、上記の悪影響を抑えられてよかったといえます。その意味で高い費用がかかったことは否定されるものではありません。これは、木造家屋や低層建築物くらいしか無かった時代に、主要な道路として必要十分な用地を確保していなかった、つまり、まっとうな道路整備に必要な哲学に基づいて、すべき時代にすべきことをしなかったことのツケを支払ったのだといえるでしょう。


いつも思うことですが、このような大変な事業を為し遂げた方々の苦労は計りしれないものです。だからこそ、せっかく造られる道路は、良いものであってほしいのです。


参考ページのリンク  + ちょっとコメント


<開通後の地図>
livedoor 地図情報 / マピオンBB 地平部の表記がない<開通前の地図>
はてなgoogle)マップのデータが少し古く比較にはちょうどよい。


● 東京都 報道発表資料 [2006年4月掲載]
未来につながる東京の大動脈!〜環状第8号線全線開通〜
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2006/04/20g47200.htm


 こんなにドロドロ流れて移動速度が遅い血管を大動脈だと表現する感覚が終わってます。  日本という国は、まさに循環器系の疾患に冒されているのです。

● 環状第8号線 施設見学会(北町〜相生町会場)
http://www.geocities.jp/tokyoroadconstruction/report02.html


● 主要地方道 [東京都道] 環状八号線(練馬区
環八通りの開通前と開通後(練馬区

環八内回りは練馬トンネルから一旦地上に出て、南田中交差点へ。
南田中交差点では内回りから笹目通りへは行けない。

http://www.geocities.jp/nocty_bypass/douro/3_kantou/r311-a.html

● そうそう、帰りに逆向きで通ったら笹目通りとの合流部分でかなりの渋滞でした。これじゃあ反対方向は使えないヨ・・・
http://blog.oricon.co.jp/aldog/archive/57


 内回りも、1車線でよいので練馬トンネルから井荻トンネルに直結させるべきではなかったか。相当な制約条件があって難しかったのでしょうか?


● 東長崎機関 道の川柳 環八通りの77年
http://higashi-nagasaki.com/d_b2005/Db01-133_01.html


● 東京都道311号環状八号線(Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%92%B0%E5%85%AB%E9%80%9A%E3%82%8A