小沢一郎候補への進言−高速道路無料化を昇華させよ


民主党の代表選挙に小沢一郎氏が立候補することになりました。


この機会に、小沢氏には、休日1000円や末端路線などに限られた無料化などの現在の政策に反対し、対距離課金制度(走行距離課税)の導入を代表選挙の公約にしてもらいたいものです。


党としての整合性は、導入に必要な科学技術の進歩に合わせた、より経済学的に合理的な方法に昇華させた、といえば問題ありません。一般道と変わらない感覚で使えるようにして経済にプラスに、という意味では無料化と理念は同じなのです。しかも無料化でのデメリットが軽減されます。


高速道路無料化政策は、国民の間で賛否が分かれ、民主党の支持率にとって±ゼロになっているとしか思えません。むしろ大衆迎合だとかポピュリズムだとか言われるネガティブな要素になってしまっています。


公約作りにまだ間に合いますか?是非ご検討ください。


今日は少しだけ、そのメリット、意義について書きます。
(道路の利用や整備の面はまたの機会にして、ここでは税金関連のみ。)


有料道路研究センターhttp://www.tollroad.org/【世界の有料道路、概要と最近の動向】のページによると、今欧米では2通り考えられているようです。


1、所有に対する課税をやめて、利用に対する課税に転換する。(オランダ型)

2、利用に対する課税を燃料から走行距離に転換する。(米国型)


日本では、一挙に2つを合わせたらよいのではないでしょうか。
つまり、所有に対する課税をやめて、利用に対する課税を燃料から走行距離に転換する。というもの。

その理由は、

  • 将来的に普及が見込まれる電気自動車やプラグインハイブリット車など、エコカー普及による税収・道路財源減少問題への対策。
  • 実際に道路を使った分だけの課税として、平等性を増す。

 −燃料を使わない(あまり使わない)エコカーと燃料だけの自動車の平等化。

道路を使うことの費用負担は平等であるべきではないだろうか、しかし、エコカーは、極端に走行経費が安くなり、適切な負担をしない。電気自動車(プラグインハイブリットの電気走行分)は、燃料税の部分だけで考えると、道路のただ乗りになる。


(ガソリンなどの燃料を使う自動車は、大気を汚染する分だけ外部不経済が大きいので、その分は燃料税を少し残してもよいかもしれない。→実際には、距離あたりの単価を少し高めにすればよいだけ。)


 −自動車が必需品の地方部や農家で一家に何台も保有する必要のある人は助かる。(下記も同)
  人は一度に一台の自動車しか運転できないのですから。

  • 自動車の販売促進

自動車産業が経済を支えている日本では、自動車は売れた方が良い。

毎日の通勤や買い物はコンパクトカーで、排気量の大きいレジャー用も所有する。というように、2台所有して使い分けることで省エネにもなる。2台持つと保有の税金が高くなるので、不必要に大きなクルマで通勤している人は相当いるだろう。


※FAQ

  • 電気自動車やハイブリット車の普及促進に反しないか?

     燃料を買う方が高く付くので、自然と普及するでしょう。

対距離課金制度−JANJANの書評の補足など


JANJANの書評から見に来てくれた方のための補足など。


対距離課金制度(走行距離課税)の世界各国での最新情勢については、元道路公団職員の織方弘道氏が運営する、有料道路研究センターhttp://www.tollroad.org/に詳しいのでご覧下さい。

世界の有料道路 概要と最近の動向

アメリカ「走行距離課税」VMT Fee “全ての道路の有料化”

オランダの「走行距離課税」 
ほか、

余談ですが、実に軽薄な情報ばかりを流すマスメディアの怠慢さに比べて、一個人でこれだけの情報を発信されていることはすばらしく、貴重で、ありがたく思っています。


上記は、政策や技術の面から見た対距離課金制度でしたが、具体的にどの道路で、どの車種に、どの位の料金を課金するのか、という研究は交通経済学の分野ですすめられています。

例:一橋大学の根本敏則教授 対距離課金による道路整備

対距離課金による道路整備 (日本交通政策研究会研究双書)

対距離課金による道路整備 (日本交通政策研究会研究双書)

この内容の要約版といえる記事は、2月3日付日経新聞朝刊「経済教室」(道路課金を考える上)に載りました。



さて、高速道路の無料化政策を掲げる民主党です。

いまや、無料化を進めれば公共交通の運営事業者や環境団体から反対され、無料化を滞らせるとマニュフェスト違反だと言われるようになっていますし、財源の面でも苦慮していることだと思います。


いろいろ考えると、もう、拙速な(とは当事者たちは言う必要はないですが)高速無料化から議論を飛躍させるべきでしょう。つまり、夏の参院選のマニュフェストに、自動車関連税制を含めた対距離課金制度への転換を掲げるべく、研究を急いで始めるべきです。


残念ながら、ウェブではまだこの制度を採り上げた記事はほとんど出ていません。諸外国で始まろうとしているのに対して、議論にすらなっていないほど遅れているのが現状ということでしょう。


時代の流れで、ゆくゆくは日本でもこの制度になると思いますが、たまには政治も、西洋からの遅れを急速に縮める働きをして、民衆を唸らせることがあってもよいのではないでしょうか。

民主党は国民を見殺しにする道路政策を終わらせよ


日本では、料金の高さによる料金抵抗やインターの位置の不便さなどにより、本来は自動車道などの高規格道路を通行できる、いや、すべき経路の交通の多くが、いわゆる下道を選択している。

せっかく莫大な費用を投じて整備した道路を使わない、使えないという馬鹿げたことは、早急に終わらせなくてはならない。

なぜなら、いま存在している高規格道路に転換するだけで、年間に死者にして7.8百人程度減らすことができると試算されているからだ。負傷者では数万から十数万人程度だろうか。これらは、平面交差がなく、横断者がいないことなどにより、高規格道路の死亡事故発生率が、国道の10分の1と安全性が高いことによる。

つまり、逆に言えばわが国の道路交通政策は、それだけの国民を見殺しにしているのだ。



諸外国のように規格の高い道路が一般道と変わらない感覚で使われることの好循環として、あたりまえに整備されていれば、事故に遭わずに済んだ人の数はもっと多かったことも付け加えておこう。

日本では、利権諸々によって、高規格道路をあたりまえに整備し、使えるものとしない道路政策が行われてきた。名神や東名に始まる高速道路という名称が象徴するように、国民側の認識もそれらは特別なものだと思いこみ、思いこまされてきた。

そして、その悪影響は民主党の原則無料化政策にも影を落として政策の実行を困難にしている。


政策の趣旨にあるように地域振興はとても重要だ。しかし道路の問題はそれだけではなく、直接的に人の生命・身体の安全がかかわっていることを民主党は強く認識する必要がある。そしてこれを踏まえて、世論が無料化(抜本的料金改革)賛成になるようにリードしなくてはならない。

この分野に関する民主党の最低限の存在価値は、自動車道を十分に利用できるようにすること、つまり、国民を見殺しにする道路行政を終わらせることにある。



関連して、公共交通機関の影響が問題とされている。上記との違いはこれが生死に直接かかわるものではないということだ。政策を考える上で重要度と優先順位がどちらにあるかは明白だ。

しかし対策はしなくてはならない。そこで、今議論されている環境税を、単なる環境税としてではなく、環境・総合交通税として、地域の足の維持に活用できるようにすればよいだろう。

民主党は政策集INDEX2009で、交通基本法や総合交通体系の確立について言及している。実際に交通基本法検討会で議論が始まっているので、正便益不採算論を踏まえ、数年のうちによい政策が定まることを期待したい。


交通基本法検討会: http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_fr_000040.html

スマートではないスマートインターチェンジ「カリスマ店長」を襲った?

宇都宮市今里町の畑で4日、車にはねられた女性遺体が見つかった。
事件に遭われた女性とそのご遺族のいたみと無念を共有したい。


この交通事故(事件)では、かねてから心配していたスマートICの危険が現実のものとなってしまったものかもしれない。その問題を提起したい。


報道では触れられていないようだが、この事故は平成19年4月から運用が開始された上河内スマートICすぐ近くで起こっている。そして、テレビニュースの地元住民へのインタビューでは、スマートインターチェンジが出来てから宇都宮方面へ行き来するための交通量が増えたと話していた。


地元住民が話しているのが事件のあった道路なのか、現地の状況がはっきりしないが、2車線ない農道のようなローカル道路がアクセス道路に使われてしまっているようだ。

写真下野新聞


今回の加害者女性がスマートインターチェンジに向かっていたかは不明だが、いずれにしろ、自動車道をこれほど規格の低い道路に接続することは危険であり、インターチェンジ設置の基準に問題があるのではないだろうか。

・事例:駒寄スマートIC:ここも危険度が高いように感じる。


理想的な設置形態は、国道や主要地方道などに直結していることだ。ただ、こうなると利用がETC搭載車の限られること以外は普通のICと変わらない。

・事例:白川中央スマートIC


少し条件を下げるとしても、アクセス道路は2車線道路で、短距離で国道や主要地方道に接続していることは条件にすべきだ。

・事例:輪厚スマートIC  但し、アクセス道路以外に規格の低い道路の抜け道があるのは良くない。


例外的には、このフランスの事例のように、利用者がインター傍らの町の人に限定されるような場合だけは、特別にローカル道路での接続も認めても良いかもしれない。 

高速道路と一般道はほとんど変わらない感覚で使えるのが世界の常識。

民主党が無事に大勝し、高速道路無料化についての議論が引き続き盛り上がりを見せています。
ネットで見付けた気になるいくつかの記事にコメントしたいと思います。


トニー四角の穴を掘って叫ブログさんが、無料化の意義を上手くまとめてくれています。

高速道路無料化による国交通省経済効果試算の驚くべき事実
http://d.hatena.ne.jp/Tony_Shikaku/20090906/1252203134

この関連記事にコメントがあるのですが、それも気になりました。

馬渕澄夫シビックミーティングに出かけて思ったこと
http://d.hatena.ne.jp/Tony_Shikaku/20090810/1249911866#c

高速道路が無料なのは世界の常識。有料の日本は世界の非常識。自民党の愚作です。
時速50キロの一般道と100キロの高速の違いだけの道路を自民党によって高速道路が何か特別な道路にされてしまった。国民も高速道路が特別な道路だと思い込んでしまっているのが大きな問題。高速道路と一般道はほとんど変わらない感覚で使えるのが世界の常識。
高速道路の無料化は二酸化炭素を減らすための環境対策である。
そにしても、あんなに頭の良い馬渕氏を今まで野党にしておいたのは、本当にもったいない。それこそ税金の無駄使いだった。

高速道路が無料なのは世界の常識。との一段は認識が稚拙だとは思いますが、その後は傾聴に値します。

中でも、高速道路と一般道はほとんど変わらない感覚で使えるのが世界の常識。
というのはとても重要です。

これまで私も折に触れて同じことを言っていましたが「あたりまえのように使う」などと表現してきました。もっとわかりやすい表現はないかと思っていましたが、それをみごとに的確に表してくれています。これから使わせて頂きます。

高速道路無料化と売れ筋自動車の車種の変化

高価なハイブリッドよりも次世代型の高性能ディーゼルエンジンへの期待が高まり、ヨーロッパと流れが合致する。

高速道路の無料化は、自動車産業の将来へも寄与する多大な経済効果が期待される政策だということを、マスコミの皆さんは一生懸命に広めてください。

駒ヶ根に想う】 駒ヶ根から社会を理解するさん
http://d.hatena.ne.jp/komachan/20090906/p1 より

日本では、利益率の低い車種ばかり売れてしまっている。という話を見た覚えがあるのですが、それは、一般道の規制速度が遅く、高規格な道路の利用機会の少ないことが多い(=自動車が自動車らしい速度域で使われる機会が少ない)ためだと考えられます。無料化により自動車を“走らせる”機会が増えれば、軽自動車や街乗り重視のコンパクトカーから、コモンレール式の高性能ディーゼルエンジン車などに乗り換える人も増えるに違いないでしょう。

二酸化炭素の排出量削減について

「一般道の渋滞が解消されて」と言われますが、正確性に欠くと思います。

もちろん渋滞解消による削減も寄与することは間違いないのですが、もともと燃料効率の悪い領域の低い最高速度の中で、さらに度々、信号の影響を受けストップ&ゴーを繰り返すことが、ますます燃費を悪くするのです。

また、そんな一般道を走行するより、渋滞といいながらも、時速40km程度で流れる自動車道の方が燃費はよいはずなので、高速道路が渋滞して排出量が増える、というのもある程度の間違いを含んでいます。


ところで、今回、国交省が存在を明らかにした試算では、割引前の1.8%減にあたる年間310万トンが削減されるということですが、少なすぎる気がします。

JAFの資料 http://www.jaf.or.jp/profile/report/youbou/image/h20youbou.pdf では、高速道路分担率(走行台キロベース)で

20%になった場合年間430万トン減
30%になった場合年間1,100万トン減 (社会資本整備審議会資料)

となっています。幾ら無料化されても走行台キロで30%まで行くとは思えないので、20%だとしても、100万トンの開きがあります。なぜこれほど違うものなのか気になります。


もっとも、二酸化炭素温暖化主因説はあと5年もすれば化けの皮が剥がれると思っているので、CO2排出量などどうでもよいと思います。むしろエネルギー確保や安全保障の観点からの省エネが必要です。

投票の前にこう考えよう、高速道路無料化


どうやら有権者は、民主党マニフェストにある原則無料化に対して、あまり良い評価をしていないようだ。民主党支持者の中でもそうだが、問題は、この際民主党を支持したいと考える有権者にとっても、マイナス材料となってしまっていることだ。


“混乱lover”と自称するちきりんさんが、「高速道路の無料化」は注目の政策で書いてくれているように、変えることをポジティブに捉える人も少なくはないようだ。


しかし、高速道路の料金引き下げは歓迎だが、民主党の無料化はやりすぎだ、と考える有権者のほうが多いことは間違いなさそうだ。そこで、そうした人に向けて、政権選択の際の一助となるよう書きたいと思う。


道路構造改革では日本の自動車道を「本来は有料性に値しない」という立場を取り、抜本的な料金や制度の改革が必要であると考えているが、そこから見ても、民主党の政策はまさに「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如(ごと)し」である。誤解の無いように念のため意味を添えますが「何事でもやりすぎることはやり足りないことと同じようによくない。(大辞泉)」ということです。


無料化は少し先の話

もしかすると有権者の多くが、選挙後の来年にでも無料化と混乱が始まるような気がしているかもしれない。メディアが選挙で高揚していることや、休日1000円政策の混雑が目に浮かぶからかもしれない。


しかし冷静に考えると、工程表や報道によれば、政権を取った後すぐにすべてが無料化され、混雑などの懸念が現実となるわけではないことがわかる。


まず来年(22年)度に何らかのアクションは起こすだろうが、再来年(23年)度にはまだ無料化はほど遠い段階に違いない。つまり、選挙が終わっても、無料化までは時間があるので、国民が民主党に対して慎重であれと、再考をせまることのできる時間は十分にあるということだ。


民主党が晴れて政権交代を果たせば、それは広く一般の国民から支持されて政権政党となったことを意味する。大企業の連合組織の味方ではない。世論からの修正をせまる声が多くなれば、それを国民の声として受け止め、かたくなにマニフェストの原則無料化に拘り、推し進めることはしないだろう。マニフェストは絶対ではないのだ。


これは民主党にとっての、アキレス腱でもあるのだけれども、上手くやれば、次の選挙(来夏の参院選?)のマニフェストで「原則無料化」から政策を変更したとしても、それが国民の声を受けた発展的な変更であればマイナスの評価にはならないだろうし、メディアも叩くことはできないだろう。


自公政権が続いた場合、すでに行われているような、いびつで不十分な引き下げで終わる。そして、山崎養世氏が訴えるように、金利が正常に戻れば債務は大きく膨らみ、償還計画は破綻する。その時は、単に膨らんだ借金を返すというバカげたことを、まさに国民負担で行うことになるのだろうか。


それよりも、体制の牙城を崩し、世界の常識である「自動車道をあたりまえに使う」ための大きな改革とその経済効果etc…に、とりあえず力を貸してはいかがだろうか。

【お知らせ】愛知サマーセミナーにて講座を開きます。


道路構造改革についてアウトプットする初めての試みです。
日本の道路のカイテキと安全に関心のある方のご参加お待ちしています。



講座のタイトル

道路交通政策の失敗と真の道路改革を考える

講座の紹介

「遅いのに危ない」真っ当ではない日本の道路交通の問題を、先進諸国と比較し、
3つの要素 <構造・交通法規(標識類を含む)・意識> からひもとき、解決策を探ります。

通行料金の引き下げと無料化は何が違うかも解説。


日時 : 平成21年7月19日(日) 2限(12:30〜14:10)
                  3限(14:40〜16:20)
    (2時限通しの内容にする予定。どちらかだけの参加も歓迎します。)

会場 : 同朋学園同朋大学
     詳細については会場で配布される資料を見て下さい。

名古屋駅より会場へのアクセス方法 (+αサマセミの公式サイト)
 笹島の新幹線ガード下 より、栄24番系統稲西車庫行き 鴨付町下車も便利です。


愛知サマーセミナーとは

誰でも講師になれ、誰もが生徒になり、本当に学びたいことを学んだり、いつも疑問に思っていることをいっしょに考えたりできる「夢の学校」です。
第21回愛知サマーセミナーは、7月18日(土)〜20日(月・祝)の3日間、名古屋市中村区にある同朋学園同朋大学名古屋音楽大学名古屋造形大学・同朋高校)および名古屋市立豊正中学校で開催されます。

リンク:http://www.ask-net.jp/summer/